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8月4日『朝日新聞』政治・総合欄に、ETIC.のチャレンジ・コミュニティ創成プロジェクトの活動が紹介されました!

朝日新聞 2004年8月4日付け

 NPOが変える官のあり方 下請け脱却 政策作り

 JR横浜駅近くの繁華街にある雑居ビルの2階。定職を持たない若者が集まってくる。多い日は70人以上だ。若い女性がパソコンの求職情報を食い入るように見つめ、茶髪の青年は企業を退職した初老の男性に相談していた。
 フリーターの就労促進へ、昨春できた厚生労働省の施設「ヤングジョブスポットよこはま」。構想段階から参加し、活動を軌道に乗せたのは、特定非営利活動法人(NPO法人)の「『育て上げ』ネット」だ。
 東京都立川市を中心に若者の自立支援に取り組んできた活動に活動に注目した厚労省の担当者が「ノウハウを生かして」と、同ネットの母体である「青少年自立援助センター」を委託先に選んだ。
 ところが、実施主体の「雇用・能力開発機構」(厚労省所管の特殊法人、今春から独立行政法人)は、NPO法人とのつき合いに不慣れ。当初は意見の相違が相次いだ。
 フリーターの生活時間に合わせるため、ネットが24時間オープンを求めたのに対し、機構は「月曜から金曜の9時から5時」。「若者の目をひくポスターやチラシを自分たちで作りたい」と考えたが、すでに役所風のデザインができていた。
 フリーターにやりたいことを見つけてもらおうと、近所の商店街との交流などのイベントを提案するネットに対し、機構は履歴書作りやパソコン講習など従来型のやり方を重視した。
 だが、他に十数ヵ所あるジョブスポットより来訪者が伸び、機構も認めるようになった。ネットの工藤啓理事長は「成果を出すことで一つずつ理解を得た」と振り返る。契約期間が終わった今年3月、運営を地元のNPOに引き継いだ。
 NPO法人や任意団体などの非営利組織(NPO)と官が連携して政策を進める「協働」が最近の流行だ。ある調査では、04年度のNPO関連予算は、地元を含め1兆2千億円になった。
 とはいえ、その多くは役所が主導権を握り、NPOを「下請け」として使う構図だ。そんな中で、NPOの仕事ぶりを認め、主導権をゆだねる動きも出てきた。
 学生と起業をつなぐ活動を10年間以上続けるMPO法人「ETIC.」(東京)が経済産業省と組んで進める事業は、NPO法人の方が仕組みを作った。
 今年度、北海道、岐阜、京都など5地区始めた「チャレンジ・コミュニティ創成プロジェクト」。地元企業に学生インターンを受け入れてもらうなどして、地域の活性化をめざす。各地で調整役のNPO法人や企業経営者を選ぶ。2年間は年700万円の補助を出すが、その後は自ら事業を続けるのが条件だ。
「利益にこだわらず、めざす社会像が明確なうえ、最先端の現場を知っているNPOの方が、役所よりいい政策を作れることがある。ある程度まかせてもらうことが必要だ」と、ETIC.の宮城治男代表理事はいう。
 経産省の担当者も「目標を共有すれば、実績がある専門家に任せた方がいい。役所はどの政策がいいのか判断と、税金を使うリスク管理を担う」と説明する。
 行政と連携しつつ、依存しないために資金を求めないNPOもある。
 NPO法人「カリヨン子どもセンター」は6月1日、東京都内に全国で初めて、子どもを虐待などから守るための一時避難所を開いた。親や警察のやり取り、福祉施設への橋渡しもする。
 都の児童相談所と協力協定を結んだが、行政から受託費や補助金を受ける事業はしない。代表の坪井節子弁護士は「お金が出ると、どうしても縛りがかかる。行政の下請け機関になるつもりはない」と話す。
 愛知県の神田真秋知事は3日、約170のNPO代表者と共同声明に署名した。NPOと同県が協力する際の指針として5月に作成した「あいち協働ルールブック」の尊重を誓い合った。指針は、行政とNPOの「対等の関係」を強調する。
 政策作りが役所の独壇場だった時代は終わった。財政面でも能力面でも限界が見える官の「下請け」ではなく、民の力を十分引き出す新たな関係作りが始まっている。