【ETIC.企業共創メールマガジン】 第1号「ビジネスとしての災害支援」を発行しました

NPO法人ETIC.より、ETIC.企業共創メールマガジンをお送りします。
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企業共創のヒントとなるような情報をお届けします。


ビジネスとしての災害支援:民間主導の災害対策プラットフォーム構築の可能性

近年、日本国内では自然災害が多発しており、平時からの備えがこれまで以上に重要となっています。特に災害に脆弱な地方では、基礎自治体のマンパワーや災害対応の経験が不足していることが多くあります。より実効性の高い災害支援のためには、官民が連携した包括的な災害対策プラットフォームを構築することが重要になっています。

日本と同様地震国であるイタリアでは「災害防護国民サービス(servizio nazionale della protezione civile)」法に基づき、国、州、県、市町村が役割を分担しています。国の機関である「市民保護局」が災害発生時の指揮・調整機関として、災害の予測、予防、救助、緊急事態の克服に至るまで管理し、被災した自治体が主体的に初期対応を行うものの、災害の規模によっては、近隣の市町村、県が迅速に支援する体制が整えられます。
また、同局は職能ボランティアの管理もしています。ボランティア団体、調理師や運転手など職能をもった市民・専門家が、平時から災害対応訓練を受けて国に登録し、登録された職能ボランティアは、災害時に最大7日間の給与、交通費、保険料が保障されており、雇用者は法的に派遣を支援する義務があります​。また災害防護国民サービスの一環として、民間企業もインフラ復旧や技術提供、防災計画への参加など多岐にわたる役割を担っています。こうした仕組みにより、プロフェッショナルな支援体制、災害対応が確保されています。

他にもアメリカには「全米災害復旧・復興フレームワーク(NDRF: National Disaster Recovery Framework)」という仕組みがあり、イギリスには「地域レジリエンスフォーラム(LRF:Local Resilience Forum」という地域レベルの協議体があります。それぞれ行政、民間企業、市民団体等の様々な主体が集まり災害対応計画の策定を行い、発災時に各主体の役割を明確にすることで迅速な対応を可能にし社会的・経済的なレジリエンスを高めています。

現在、日本国内においては、基礎自治体は各分野の「プロフェッショナル」ではない中で、発災後の物資調達、避難所の運営、災害DX等への対応が求められ、疲弊し、そのしわ寄せがすべて被災者に及んでいるのが現状です。

これまでも多くの企業が本業を生かした支援や物資の提供、社員ボランティアの派遣など、さまざまな方法で被災地の復興をサポートしています。しかし「社会的責任」という視点からではなく、各分野のプロである民間企業が、平時から計画的にかつビジネス的に関与し戦略的に社会のニーズに取り組むことで、防災、減災、復旧、復興どのフェーズにおいても社会的にも経済的にも価値が創造される仕組みにはできないでしょうか。

例えば、イオン株式会社は東日本大震災以降、店舗の安全対策強化や防災拠点化に取り組んでおり、2012年に小売業として初めて、陸上自衛隊補給統制本部と「大規模災害時における物資の供給要請に関する協定」を締結。2017年には災害対策基本法に基づく「指定公共機関」に指定されています。これにより、迅速かつ持続可能な形で緊急物資の輸送等自社事業を活かした支援を実施できるようになりました。現在では、災害発生時、自社事業継続のために必要となるエネルギー会社だけでなく、地域行政、大学、民間企業等全国780を越える自治体・外部パートナーと1,100以上の防災協定を締結し連携強化しています。また、平時においても「訓練」を定期的に実施し、社内や店舗内のみならず、協定先との支援連携体制の確認等も行っています。

こうした取組は短期的な財務価値にはならないかもしれませんが、企業として発災時の減災・復興・復旧という社会的な取組にどう向き合うのか、そのために平時から何をしておくのか、長期的視野を持つことが今後を見据えた事業発展につながっています。

私たちETIC.は、東日本大震災以降、災害復興支援に注力してきました。これまでに、多くの人材を被災地に送り、民間企業と協力して、被災地域の中間支援組織を支え、緊急期から復旧・復興期にわたりさまざまな活動を実施していますが、このままでは地方の被災地は疲弊していくばかりだと感じており、民間企業が主導し、行政と連携することで日本国内でもプロフェッショナルな支援体制、災害対応の仕組みをつくっていけないかと考えています。

現在は、防災・災害復旧・復興に関心がある皆様と平時から学びあい、つながりをつくっていくため「だれ一人取り残さない防災・災害支援アップデート研究会」を実施しています。
民間企業のリソースを活かしたレジリエンス強化について一緒に考えていきませんか?

ご関心のある方、ぜひ研究会へのご参加もお待ちしております。


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