自主経営組織化の最新情報(前編)〜マネージャー職の廃止と3役の設置〜

※本記事は「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターニュース」2023年8月24日号からの抜粋です

こんにちは。ソーシャルイノベーション事業部の白鳥です。今年の夏はいかがお過ごしですか。

これまで自主経営化に伴い、組織の構造と意思決定ルールを少しづつ変化させてきました。
その取り組みの流れは以下のようになります。

そして、今年6月、新年度のスタートに合わせ、事務局規程と決裁規程を改訂。これまで形式的に残っていたマネージャー職を正式に廃止するとともに、意思決定プロセスをティール組織に合わせたものに刷新。これにより、ETIC.の組織構造と意思決定ルールは完全に新しいものとなり、自主経営化に伴う一連の規程類の整備はひとまず完了となりました。

このメルマガでは、今年6月に実施したマネージャー職の役割分担についてと、ティール組織型の意思決定プロセスについて、2回に分けてお送りします。

今回は、マネージャーの職務をどのように役割として定義し運用しているかについて取り上げます。

今回の取り組みの背景

今回の取り組み背景として、起業家精神を社会に広げるETIC.自身が、起業家精神を体現する組織でありたい、ということが問題意識の根本にありました。

もともと、ディレクター陣を中心に、自主経営型の組織というイメージはありました。とはいえ、まずは組織全体の足腰を強くする、マネジメントできる人材を増やすという意図で、2013年にいったん事業部制に踏み切り、事業部長を中心に意志決定をするような体制を進めました。

それによって、事業部は強くなり、事業部長も育ちましたが、一方で縦割りの構造や組織の階層が深くなり、個々が起業家精神を思う存分発揮しやすくなるのではなく、何かを進めようとする際に社内調整や誰かの判断を仰がなければならない(かつ事業部を越えた話になるとさらに複雑になる)ということが起こってきました。

その弊害は、特に事業部を越えたプロジェクトをしようとする際に顕著で、そのプロジェクトを進めている仲間を助けようと思っても、そのサポートすらしにくかったり、推進している人自身も助けを求めにくかったり、ということが起こりました。これは組織のあり方を抜本から見直さなければならない、ということで、組織のあり方を抜本から見直す取り組みが始まりました。

このような問題意識を解決するために、適切な組織の考え方を検討した結果、ティール組織の考え方をヒントに組織改革を進めてきました。

ティール組織の組織構造

ティール組織の特徴の一つに、権限をヒエラルキー上の「役職」に独占させるのではなく、「役割」として定義し、それぞれ適切な担当者に割り振り、分担することが上げられます。

この「役割」は固定的なものではありません。メンバーが適性や希望によって役割を取り換えることができる他、機能しなくなった役割を廃止したり、組織運営のために必要な役割が新たに生まれたりします。

これにより、組織の構造自体が、組織の目的達成のためにダイナミックかつ自律的に更新され続けるプロセスになります。また、スタッフ一人ひとりの特徴や知見を最大限発揮する適材適所を実現することも可能になります。

マネージャーの職務を3つの役割に分解する

これまで、マネージャーの機能をどうやって分解してルールにするかについて、認定NPOとしてふさわしいガバナンスの水準を満たしている必要もあるため、専門家の監修も受けながら、慎重に検討を重ねてきました。

そして、マネージャーの職務を分解し、「①事業計画・予算担当」「②契約・リスク管理担当」「③組織・人事担当」の3つの担当(通称「3役」)を各チーム内に設置しました。

また、各チーム内には任意で「統括」職を設置可能です(経営管理部のみ事務手続きの決裁のため設置必須)。

【各担当の役割】※承認以外の実務はチーム内で適宜分担してよい。

①事業計画・予算担当

事業部・チーム内の事業計画や予算を策定し、事業の進捗を追い、施策を適宜チューニングする。

・予算委員会に出席し、全社・他チームと必要な情報の連携を行う。

・チームの事業計画・予算計画づくりとそのモニタリング・変更を担う 。

・経費精算・請求管理システムの承認を行う。

②契約・リスク管理担当

事業部・チーム内の契約のWチェックや契約管理、チーム内でのコンプライアンス遵守・危機管理のための周知サポート。

・コンプライアンス委員会と連携し、事業に伴うリスクを推察し、事前予防を行う。

・リスク発生時に危機管理委員会との連携して対応を取る。

・各チームの契約内容の確認と電子契約システムの承認を行う。

③組織・人事担当

事業部・チーム内の採用・育成・労務など人事にまつわる各種業務を経営管理部門や各種事業部との調整を担当する。

・人事ワーキンググループに出席し、全社・他チームと必要な情報の連携や協力・相互支援を行う。

・人事関連のプロセスを推進する(相互フィードバック、報酬決定、入社・退職手続きなど)。

(任意設置)統括

チーム全体の目的の達成のため、方向性や優先事項を提示。他チームとの調整も主に担う。

運用ルール

各チーム内の設置人数は、自己決裁による不正防止のために、それぞれ原則2名設置を義務付けています。人数が少ないチームもあるため、役割の兼職も可能です。

設置の基準としては、経費の支出があるチームには原則設置を必須としています。今回まずは全チームに設置しましたが、今後は人数の少ないチームをまとめて運用するなど、制度を柔軟に見直す予定です。

担当の任期は1年間。毎年年度の開始前に担当者の申請をしてもらいます。

運用を開始してみて

今回登録をされたメンバーは、これまでのディレクター・マネージャーに加え、中堅以上のスタッフが並び、フレッシュな顔ぶれになったと感じました。

運用を開始して約2ヶ月経ちましたが、大きな混乱はありません。これまでの2年間で、各チームのマネジメントを分担して担うように意識づけ、チームの方針も参加型のプロセスで決めるように徐々に変化してきたためかと思います。

また、マネージャー以外の中堅スタッフにマネジメント能力を身につけてもらうためにも良い仕組みであると感じています。

以上、今回の記事ではマネジメント機能の分担についてご紹介しました。次回の記事では、ティール組織型の意思決定プロセスをどのように導入したかについてお送りします。