※本記事は「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターニュース」2022年4月26日号からの抜粋です
こんにちは、野田香織です。年度初めの4月、皆さんいかがお過ごしでしたか。
新しい事業やプロジェクトが始まったという団体や、プライベートではお子さんの入園・入学等で、バタバタとされていた方もいるかもしれませんね。
先週ETICは、1泊2日のギャザリング(合宿)を開催しました。例年は、スタッフ全員が集まって、各事業部の現状を共有したり、今後の事業のことを話しあうギャザリングを日中に日帰りでおこなっているのですが、今回は施設をお借りしての泊まり込み。宿泊をともなうギャザリングは、15年ぶりでした。
また、これまで組織づくりを担うチームがプログラムを企画していたものを手放し、手挙げ制の有志で場をつくったのも特徴です。
振り返ってみると、印象的だったのは「余白」の効果です。
それは後ほどレポートするとして、まずは概要を共有します。
合宿主催チームが掲げたコンセプトは『個人性の爆発』。いろんな企画がつくられました。
新型コロナウイルスをきっかけに在宅勤務が定着し、地方に移住するスタッフも増えました。対面イベントもほとんどなくなり、会議もオンライン。物理的に顔を合わせる機会が激減した今、改めて、メンバーの想いや根っこに触れ合い、どんな組織を一緒につくっていきたいか、を考える時間にしていきたいというのがこの合宿の背景にはありました。
現地参加の人は全員、抗原検査またはPCR検査を受けて集合。メインコンテンツは、対面とオンラインのハイブリッドで開催することで、遠隔からも参加できる仕立てです。
実際にどんなことをやったのか少しご紹介します。プログラムはこんな感じ。
<1日目> 4月22日(金)
12:00 バス出発
14:00 現地到着
14:15 開会、チェックイン
15:15 個人性の爆発セッション!(70分✕2回)
17:45 休憩
18:00 夕食(バーベキュー)
20:00 夜のお楽しみタイム(自由時間)
<2日目> 4月23日(土)
7:00 ラジオ体操&散策!(自由参加)
8:00 朝食
9:00 メインコンテンツ《オンライン参加可》
ランチ
14:00 メインコンテンツ終了、記念撮影、バス出発
16:00 東京到着、解散
日常を切り離し、余白をつくる
今回は少し遠出をし、茨城県で実施しました。泊まりということもあり、家族の同伴もOK。コンセプトを体現する「個人性の爆発セッション」は、事前にテーマの募集をかけ、パーソナリティ担当がその場を企画。メンバーは自分が興味あるところに自由に入ることができます。事業づくりや、ガバナンスについて話す人もいれば、好きな映画について語る会もあるという幅広いラインナップです。
夕食は外でバーベキュー。席がないので、移動しながらたくさんの人と話せるという嬉しい副次効果つき。その後は就寝まで、完全な自由時間です。深夜まで麻雀大会があったり、おもむろにダンスをする部屋があったり、バルコニーで星を観察したり、部屋に集まってたわいのない雑談をしたり、ほんとうに自由に過ごしました。たっぷりの「余白」があるからこその、価値ある対話の時間となりました。
2日目のメインコンテンツでは、2021年度の活動を振り返り、今、みんなのエネルギーはどんなところにあるのか、2022年度はどんなことができそうか、そのとっかかりを皆でつかんでいきます。
目にしたエピソードをあるがまま共有する
2021年度を振り返るセッションでは、この一年ETICで仕事をする中で、実際に目にした(耳にした)心温まるエピソード《ポジティブなこと》や、ショックを受けたり、驚いたり、モヤモヤしたこと《ネガティブなこと》を紙に書いて、共有するというワークを行いました。
このエピソードは奇をてらったものや、一風変わったものである必要はなく、あくまで個人のアンテナにひっかかったものを書きます。自分にとって当たり前のようなことであっても、他の人からみるとハッとするものである可能性があるからです。さらに自分自身が現場で感じたこと、気が付いたことを「エピソードを交えて」書くことがポイント。
(たとえばこんな感じ…)
まずは個人作業としてこれらを書き出し、その後、4~5人でエピソードを共有。その後、書かれた紙を眺めながら、一つ一つのエピソードをあるがまま受け取り、味わいます。ネガティブなことを、無理やりポジティブに変換する必要もありません。
わたしたちが集まっている意味は何か?
エピソード共有の時間のあと、「私たちが集っている意味は何か?(存在目的)」に耳を傾けながら、次の問いについて考えを深め、対話する時間をとりました。
私たちが集っている意味は何か?(存在目的)に耳を傾けながら…
- 私たちの目の前には、いまどんな機会・可能性・資源があるでしょうか
- 私たちの目の前には、いまどんなチャレンジ・テンション・リスクがあるでしょうか
これもいきなり話し始めるのではなく、個人で書き出す作業を行い、その後、普段あまり接点がないメンバーとグループになり、共有する時間をとります。担当している現場が違えば、当然見えている景色も、ひっかかるアンテナも違います。視点の異なるメンバーで対話を深めることで、組織の状態がより立体的に見えてきます。
最後は「私たちの存在目的を個人または全体としても実現していくために、はじめるといいこと、やめたらいいこと、続けたらいいこと」について書き出します。上がってきた声のなかで共通していたテーマをいくつかピックアップし、それぞれのテーブルを設けて自由に対話をしました。そこでギャザリングのメインコンテンツは終わり。
解決を急がないことで、
日常につなげるための余白を持たせる
今回のギャザリングで印象が強かったのは、余白(スペース)がたくさんあったこと。ETICのプログラム卒業生はよくご存知だと思いますが、普段の私たちはランチタイムをメンタリングの時間に当てるなど、何かと詰め込む場づくりをしがちです。(ごめんなさい…せっかくの機会を1分でも無駄にしてはいけないという観念があるのかもしれません)
コンテンツを詰め込み過ぎず、自由時間もたっぷりあったこと。また山の中にある施設ということもあり、携帯の電波も届きにくく、Wifiも弱い(笑)という物理的な環境が、余計な情報を遮断し、心を落ち着かせ、自分の考えや仲間の声に耳を傾ける手伝いをしてくれたように思います。
また「すぐに問題解決しようとしない」ということも、余白をつくる大切な要素だと感じました。
数年前のギャザリングだと「始めること / 辞めること / 続けること」について洗い出し、その場で重要度や優先順位を決めて、タスクチームを組み、次のミーティングの設定まで(!)やっていたものですが、その熱量が続くのは稀でした。
今回のギャザリングでは、さまざまなワークや対話も、あえてゴールは設けず、上がった意見やアイデアについても、進める / 進めない、乗る / 乗らないも自由に選択ができ、具体的なネクストステップを決めることも、この場では手放しました。
「何をやるか」を決めるよりも、そこで話された内容や、対話を通して感じたことを、ひとりひとりが持ち帰り、日常の業務のなかで取り扱われるほうが、結果的にインパクトが大きいのではないかと、個人的には思っています。
皆さんの組織では、全社合宿のような取り組みをやっていますか?
どんな工夫をされていますか?ぜひ聞かせてください。