NPO法人ETIC.より、ETIC.企業共創メールマガジンをお送りします。
新たな価値の創造や社会課題解決に向けた
企業共創のヒントとなるような情報をお届けします。
■人的資本と越境活動: ボランティア活動がもたらす企業価値の向上
近年、企業価値を高め中長期的な成長を実現するために、 人材を「資源」ではなく「資本」と捉え、人材の価値を引き出す「人的資本経営」の考え方が不可欠であるとして注目が集まっています。アメリカでは2020年、上場企業に人的資本の開示が義務化され、日本でも2023年の法改正を受け、有価証券報告書に人的資本に関する情報開示の義務化が進んでいます。
人的資本は、対外的に識別可能な資本として示すことは難しいものの、企業価値に深く関与するものであり、その価値の最大化には従来の雇用慣行やパラダイムからの脱却が求められており、個人も主体的・自律的に変わること、組織も社員一人ひとりと向き合い、多様性を高めるための支援や施策を推進することが重要です。
こうした流れの中、多様性を尊重し育てるため、また社員の成長と企業競争力向上のために、ボランティア活動が注目されています。企業の寄付や社員ボランティアを支援するBenevity社(本社:カナダ)がグローバル企業473社に対して行った最新の調査によると、2023 年に企業で行われた社員ボランティアは、参加社員数、参加時間ともにコロナ前の約3倍に伸びており、特に、コロナ禍以降ハイブリッドやリモートワーク環境が進む中で、ボランティア活動は社員が企業とつながりを感じる機会となっています。同調査ではボランティア活動を通じて多様な人々と接する経験により、共感力や思いやりが高まり、職場でも視野が広がり、チームの結束力も強化され企業全体の成長を促すという双方向の価値を生み出すことが示されています。
日本においても働き方改革の一環で副業やプロボノ活動が促進され、ETIC.が2023年に実施した調査でも、プロボノ活動を経験した社員が組織に対して前向きな姿勢を持ち、忠誠心が高まったという事例が報告されています。
また、あるメーカーでは、プロボノ経験が社員の柔軟な発想や変化への対応力を育むきっかけとなり、持続的成長の土壌が育まれるなど、組織経営全体への効果も示されています。「VUCAの時代」と言われ、ビジネスの不確実性が高まり、持続的な企業成長を実現させるには柔軟な発想や、変化への適応力が求められる今後、社員の越境活動の充実は企業にとってもメリットがあると言えます。
一方で、国内企業からは社員ボランティアの推進が難しいという声があるのも事実です。
企業のボランティア支援には①奨励、②促進、③後援の三段階があります。日本企業はボランティア休暇制度の整備など「③後援」が進められている一方、職場でボランティアに対する前向きな風土をつくる「①奨励」や、ボランティアに対する心理的なバリアの払拭といった「②促進」が後手になりがちだと言われています(CSR白書2020)。
実際に社員のボランティア率が高い企業は企業内の風土醸成に取り組んでいます。
例えばトヨタ自動車株式会社は「恩返し活動」として社員がボランティア活動に参加すると活動毎にポイントが積み立てられ、そのポイントを換算した額が社会福祉法人等に寄付される仕組みを2015年に始めました。また昼休みに30分程度で参加できる「ちょいボラ」を開発するなどし、2015年時と比べ2017年にはボランティア参加率が3倍、全社員の6割が何らかのボランティア活動に参加するようになりました。
日本生命保険相互会社では、社内のイントラネットで地域ごとのボランティアの募集情報を発信したり、経営層が行うボランティア活動の様子を紹介しています。また好取組事例をメールで配信するなど、社員がボランティア活動の具体的なイメージを持ち、取り組みやすい雰囲気が作られています(Works Report 2019)。
三井住友フィナンシャルグループは2011年から、従業員が専門知識を活用してNPO等を支援する「プロボノワークプロジェクト」を進めています。グループの掲げる社会的価値の創造に従業員の「全員参加」を目標にした社内の仕組み作りに取り組んでおり、2023年度からは、業務時間の最大20%をプロボノ活動に充てることが可能になるなど、ボランティアを支える仕組みの整備にも力を入れています。そして今年1月に発生した能登半島地震に関して、被災地の復興と子どもの居場所支援のため、子どもの見守り、学習支援のための寄付とあわせ、ボランティア派遣、プロボノ人材派遣を実施しています。
このように企業ボランティアを推進するには、想いのある社員が越境しやすい風土や仕組みをつくることがポイントです。企業が社員を育て、自社発展のために寄与する抱え込みの構造から、個人が主体的かつ自立的に社外で挑戦・成長を重ね、社内に新しい視点やナレッジを持ち寄り新しいイノベーションが生まれやすい土壌を育む構造へ。
社会のために何かしたいという個人の想いを拾い、その個人の成長を支援する場や仕組みを企業・組織が作り創発的に成長していきませんか?
ETIC.では、企業における社員のボランティア機会創出の個別サポートを行っています。
例えば、能登半島地震後には、能登での三井物産株式会社の社員ボランティア活動を7月下旬から11月まで毎週末サポートしています。ご関心あればお気軽にご相談ください。
2022年にロート製薬株式会社、アビームコンサルティング株式会社との協働により、【Beyonders】という3ヶ月限定のプロボノ・副業プログラムを立ち上げ、社員の皆さんの「挑戦する機会」も提供しています。日本航空株式会社、コクヨ株式会社なども新たなパートナーに加わる等、年々関心の輪が広がっています。ソーシャルスタートアップのプロジェクトに組織もスキルも関係なく、自分が共感するから参加する、そんな挑戦機会の創出の場です。
自分が何かプロジェクトを応援してみたいという方、自社の社員へ機会提供したいという方、まずはどんなプロジェクトがあるか覗いてみてください。
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