コラム

週3日ETIC.、週2日パン屋 〜私が「チャレンジの当事者」になって見えた、伴走支援の価値〜

※こちらのコラムは、note ETIC.ソーシャルイノベーションセンターからの転載です

こんにちは、ETIC.ソーシャルイノベーション事業部の川上です。
新年度が始まり、みなさん少し落ち着いてきた頃でしょうか。

今日は、ETIC.の業務内容やプログラムについてではなく、いつもと少し毛色を変えて、ETIC.で働く一個人である私の新しいチャレンジについて書いてみたいと思います。

よかったら最後までお付き合いください。

働き方が変わったことで移住、そして新たな夢を見つける

いきなりですが、少し時間を遡って話をさせてください。

私の初めての育児休暇はちょうどコロナ禍と重なっていました。

コロナで社会のあり方が一変し、私たちETIC.も同様に、働く環境が大きく変わりました。

ETIC.のオフィスは東京にありますが、フルリモート勤務が当たり前になり、実家に帰る人、東京を離れる人…。

仲間の多様な選択を見守りながら、私自身も「都会で子育てをすること」への漠然とした不安を感じていたこともあり、フルリモートが叶うならと地方移住を検討していました。

「もっと、健やかに子どもを育てられる場所があるのではないか」

そんな願いを胸に、全国を巡るなかで偶然出会ったのが、現在住んでいる広島県福山市の最南端にある小さな港町・鞆の浦(とものうら)です。

瀬戸内海の中央に位置し、穏やかな海と山に面したこのまちは、歴史も深く、日本遺産にも認定されています。

映画『崖の上のポニョ』の舞台のモデルになったといわれる場所、と言えばイメージが湧く方もいらっしゃるかもしれません。

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鞆の浦のメインシンボル常夜灯

東京にいた頃は、2年ごとに引っ越しを繰り返すような「根を張らない暮らし」をしていた私が、何よりここで暮らす人々の温かさに強く惹かれ、気づけばこのまちがどんどん好きになり、移住してもう5年目になります。

このまちで暮らす中で、「自分自身も、ここでの暮らしをもっと楽しむために何か貢献したい」という思いが募るようになりました。

そして、その思いを形にするため、パン屋が一軒もないこのまちで自分のできることとして、購入した古民家の自宅をリノベーションし、土間で小さいながらもパン屋を始めることを、密かに決意しました。

「中途半端になるのは失礼ではないか」という不安と葛藤

そもそもなぜパン屋?と思う方もいるかもしれませんが、私はもともとパンが大好きなんです(笑)

いつからか手作りすることが増え、きちんと技術を身につけたい気持ちが強まり、ETIC.に転職する前の会社員時代にはパンの専門学校にも通っていました。

転職後はETIC.の仕事と並行して、早朝にパン屋でも働いていました。

パン屋なら私にもできるかも──

そんな実感が積み重なって、今回の決断に至りました。

パン屋を始めると心に決めたものの、ETIC.の正社員という立場で、しかも2人目の育休中に、チームのみんなからするとかなり唐突なアイディアであるパン屋構想をどう打ち明けたらいいか、とても迷いました。

打ち明けたら、自分勝手だと思われるだろうと思えば思うほど、大きな勇気が必要で、パン屋とETIC.の業務の両立に自信が持てなければ、育休から復帰せずに退職すべきではないか、という考えも頭をよぎり、どういう形で復帰するのが最善か、答えを出せずにいました。

まず、育休復帰前の人事面談でこのことを話した際、チームメンバーは私がETIC.に留まることを歓迎してくれました。

その時、「ETIC.という組織は、目の前でチャレンジする人を本当に心から応援してくれるのだ」と強く感じたことを今でも覚えています。

「中途半端な関わりになるのは失礼ではないか」「パン屋は現実的に厳しいのでは?」「ETIC.の勤務時間を減らさずにできないか?」といった、ネガティブな反応を勝手に予想し、怖さを感じていたのですが、現実は全く違いました。

チームメンバーは、私の「私らしい選択」を祝福し、歓迎してくれました。

自ら事業を始めることは、これまで支援してきた社会起業家の方々へ、より多くのものを還元することにつながるはず──

そんな言葉で、力強く背中を押してくれたのです。

結果として、私はETIC.の正社員・フルリモート勤務のまま、勤務頻度を週3日に変更し、夢を実現することができています。

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実際にショーケースにパンを並べたときの写真

多くの人を応援してきたETIC.の文化は、もちろん組織の内部にも根付いている

この記事を読まれている方には周知の事実かもしれませんが、このような「肯定し、応援し、背中を押す」姿勢は、ETIC.においてはチーム内に留まる話ではありません。

これまでETIC.は、学生、若者、起業家、ソーシャルセクター、ビジネスセクター、行政関係者など、立場や業界を超えて、チャレンジする多様な人々を応援してきました。

最新のアニュアルレポートによると、1997年度以降、これまでに累計で約19,000人もの方々が、ETIC.が提供してきた実践的なプログラムに参加しているとのこと。

身内ながらも、その圧倒的な数に驚かされます。

「応援する」ことがまるで職業病のように染み付いているETIC.のメンバーが社会に提供している価値──

それは、チャレンジする人が集うエコシステムを育んでいる点にあります。

そして、そのエコシステムは、まず組織の内部から始まっていたのだということに、改めて気付かされました。

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少し懐かしいですが、ETIC.メンバーとの2014年の初詣の様子(前列右端が私です)。2011年にインターン生として関わり始めたのが最初の接点。2018年ごろ、再び戻ってきました。

「支援者」から、一人の「当事者」へ

私が今パン屋を開業しようとしていることは、単なる個人の趣味ではありません。

それは、地域に根を張り、自らリスクを取って新しい事業を始めるという、私なりの「実践」でもあります。

これまで私は、支援する側として多くの起業家の方々と接してきました。

もちろん、起業家のみなさんの気持ちを最大限理解しようと努めてきました。

しかし、いざ自分が古民家を改装し、保健所の許可を取り、一つひとつの準備を進めるプロセスを経験してみると、挑戦の裏側にある孤独や不安、そして準備の泥臭さを、これまでにないほど切実に自分事として感じるようになりました。

組織から受けた「応援」を、私はこれからどう返していくべきか──

それは、自らがプレイヤーとして動く中で得た実感を糧に、これまで以上に挑戦者の心に寄り添い、現実に即した並走ができるスタッフへと成長することだと思っています。

週3日のETIC.での業務と、週2日のパン屋としての活動。

この二つのわらじを履くことで生まれる視点の往復が、結果として、ETIC.が支援する方々への提供価値を深めることにつながると信じています。

立場は変わっても、誰かの「やりたい」という意志を尊重し、社会の新しい可能性を広げていくという目的は変わりません。

これからも、一人の当事者としての経験を最大限に活かし、ETIC.の仲間と共に、挑戦する人々を支えるエコシステムを育んでいきたいと考えています。

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そして、4月4日ついにグランドオープン!お客さまが撮ってくれた夫婦写真です。

パン屋についてInstagramで発信しています。よかったら遊びに来てください。Instagram:緒(いとぐち) @itoguchi_bakery

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