【ETIC.企業共創メールマガジン】 第5号「価値創造を目指す共創パートナーと出会うには?」を発行しました

NPO法人ETIC.より、ETIC.企業共創メールマガジンをお送りします。
2016年以降、民間企業や地方自治体、ローカルベンチャー等、多様なセクターの共創を支援してきた私たちの視点から、新たな価値の創造や社会課題解決に向けた企業共創のヒントとなるような情報をお届けします。


良い共創パートナーと出会うには?

「行政や事業者などパートナーが見つからない」「紹介してほしい」
他セクターとの共創を目指す企業担当者の方から、こうした声をよくいただきます。例えば、医療分野の課題解決のために、行政や病院と連携して、新しい仕組みをつくりたい。行政も、病院も、相性のよさそうなところに連携をもちかけても、話を聞いてもらえない。うまく関係を構築できない。このようなケースを多く耳にします。
企業が新たな価値を生み出し、社会とともに成長していくためには、志を共にするパートナーの存在が欠かせません。しかし、その出会いは偶然のように見えて、実は必然的に生まれるものでもあります。
いま、社会課題はますます複雑化・多様化しています。それにともない、企業にとっても、人材の成長、組織のあり方、そして「共創」の重要性が高まっています。そこでは、個人や既存の枠組みを超えた“関係性”がカギになります。
だからこそ、まずは組織の壁を越えた関係性を育み、共創の輪を広げていく「場」の存在が必要だと考えました。

そんな想いから生まれたのが、年に一度の「お祭り」――
Beyondカンファレンスです。
企業や個人が一堂に会し、試行錯誤中のプロジェクトを持ち寄って、お互いにブラッシュアップしていく。その最大の特徴は、「批判や否定ではなく、挑戦を全力で応援する文化」です。立場や組織の枠を超えて応援し合うことで、
数多くの“共創”が生まれ、社会が変わり始める“兆し”が見えはじめています。
実際に、このカンファレンスをきっかけに、さまざまな共創事例が生まれ始めています。そこから見えてきたのは、「良い共創パートナーと出会うためのヒント」です。
本号では、その具体的な共創事例をもとに、共創がどのように生まれるのか、そしてそのプロセスについて考えていきたいと思います。

地域老舗企業がハブとなった挑戦の連鎖

佐賀に本社を置き、九州北部を中心に広く調剤薬局事業等を展開している株式会社ミズ。創業115年の歴史を持つ同社は、「地域を健康にする」という経営方針を創業以来貫いてきました。数年前からは「くすりの売れない薬屋」をビジョンに掲げ、地域のウェルビーイングを高めていくことを目指した改革が始まっています。その取組の一環として、ミズは、病気と闘う子どもたちにスポーツ・芸術・文化を届ける活動を行うNPO法人AYA(東京都中央区)と連携し、佐賀県内での映画上映会やBリーグ観戦企画が進行しています。この連携のきっかけとなったのが、羽田イノベーションシティで開催された第3回Beyondカンファレンスです。AYA代表理事の中川悠樹さんの想いに、ミズ代表取締役の溝上泰興さんが共鳴し、両者の協力関係は一気に加速しました。

その下地づくりは2年前にさかのぼります。2023年5月に京都市京北の里山で開催された第2回Beyondカンファレンスに初めて参加した溝上さんは、その場で「九州版のBeyondカンファレンス」をやりたいと決意し、その場で宣言しました。その根底にあったのは「誰もが挑戦でき、それを応援しあえる地域になることが、次世代の地域の健康(ウェルビーイング)につながる」という想いでした。そこから2年をかけ、この想いを社内や地域に広げ、仲間を増やすために、社内では「全力応援ミーティング」(社員発案の企画を全力で応援するブレスト会議)を繰り返し実施。それまで反対意見の多かった先輩役員からも、社員の提案を応援する声があがるようになりました。
地域では、「そいよかね!(佐賀弁で「それいいね!」)チャレンジ広場」を年4回開催。これは、地域で新しいチャレンジをしたい人たちを応援するイベントです。地元の高校の吹奏楽部の発表の機会であり、デジタル系ベンチャー企業による地元の子どもたち向けのプログラミング教室やVR体験会の実施、障がい者アートの団体による新たなワークショップの実験など、着実に地域に「チャレンジ」と「応援」の輪を広げてきました。加えてこのイベント開催には地元企業だけでなくミズに賛同した大手企業の有志も関わっており、彼らにとってもチャレンジの場となっています。

着眼大局、着手小局というマインドの元、短期的な利益にはならないものの、このように、地道に社内や地域の中に広がった社会関係資本、また何よりも挑戦を応援しようという文化資本を土台に、「くすりの売れない薬屋」として、地域になくてはならない存在(まちのくすり)となることで、新たな事業開発も見据えています。
「地域の中で自社はどのような役割を担っていきたいのか」というビジョンをアップデートし、そしてそのために必要な自社のスタンスが整っていく中で、地域内外でのいい出会いが加速度的に膨らみ始めています。

能登に空港を持たないJALの能登支援

日本航空株式会社(以下、JAL)に所属する上入佐慶太さんは、2023年11月に偶然にも能登町で開かれたワーケーションに参加。そのわずか2ヶ月後、能登半島地震が起こります。「能登のためにできることをしたい」という想いが日に日に強くなる中、上入佐さんは能登へと足を運び続けます。
彼が事務局を担う、関係人口の桁を変えるためのコンソーシアム「JVP(Japan Vitalization Plantform」の仲間たちとともに、活動を継続。そして2024年5月末に開催した第3回Beyondカンファレンスの場で、「能登復興×関係人口」のセッションを企画しました。ここでの様々な出会いをきっかけに新たなアクションが始まります。

2024年6月に創業したばかりの東京のスタートアップ企業、株式会社ウニベルの代表・横山真輔さんと意気投合。また同じく能登半島支援をしていたENEOSリニューアブル・エナジー株式会社とも連携し、同年9月には能登町での
社会人・大学生向けの実践型フィールドワークを開催しました。この取り組みを第一歩として、大学生が都市と地方を自由に行き来しながら新たな学びと挑戦の機会を広げることを支援する事業「Campus Everywhereコンソーシアム構想」が立ち上がります。現在、この構想は金沢大学、宮崎大学、広島大学など、複数の大学も巻き込んだプロジェクトとして、広がり始めています。
また「東京在住の能登出身者たちの動きが大事になる」という想いから、Beyondカンファレンスでは、「能登出身者による座談会」も企画しました。この場をきっかけに、2024年9月、能登出身者たちを中心としたコミュニティ「能登ヨバレ」が発足。能登を東京から応援するネットワークとして、今後の活動が期待されています。

当初は上入佐さん個人の想いで動いていた活動でしたが、2024年7月には社内ベンチャーとして事業化するに至りました。同年9月末の豪雨災害後には、これまでに培った能登での繋がりを活かし、新たな支援活動も開始。能登町定住促進協議会、NPO法人ETIC.とともに能登町内の農業支援・集落支援のためのボランティア派遣を行っています。JAL社内にも仲間が増え、能登へのボランティアに何度も参加する社員も増えてきています。
JALは能登に空港を持たない航空会社です。それにもかかわらず、上入佐さんが能登半島支援に奔走した結果、JALグループの有志や関連部署、JAL北陸支店を巻き込み、さらには国交省が昨年立ち上げた二拠点居住プラットフォームの関係者や、同業他社の方など、所属の壁を超えて様々なところから上入佐さんに相談が寄せられるようになりました。

共創パートナーと出会うには

2つの事例には、共創においてポイントとなった共通項があります。
まず挙げられるのは「アジェンダのない出会い」です。
例えば、ミズの溝上さんはBeyondカンファレンスでの出会いをきっかけに、自身の想いを確固たるものにし、地域に根差した挑戦を応援する文化を築いています。JALの上入佐さんもまた、ワーケーションやカンファレンスでの偶然の出会いを通じて共創の種をまき、能登町内外での支援活動を通じて自らの役割を再定義し、JAL全体を巻き込む活動へと発展しました。このように、具体的な共創の目的や仮説が明確でなくても、価値観や想いを共有できる場に身を置くことで、思いがけないつながりが生まれます。
そこから一度の出会いで終わらず、時間をかけて関係を築き続けることで信頼が生まれ、共創が促進されます。ミズが「全力応援ミーティング」を重ねたり、上入佐さんが能登に何度も足を運んだように、継続的なかかわりが信頼関係を構築し、共通言語を増やすことで共創の土壌が形成されます。
また、共創は他者だけでなく、自分自身も変えていくプロセスでもあります。共創を単なるビジネス機会として捉えるのではなく、関わる人や組織全体が進化し続けるプロセスと捉え、自分たち自身の在り方や役割を見つめ直し、再定義し、自分や組織の変化を生み出すことが重要です。この変化を広げることで、既存の枠を超えた事業構想に繋がります。
溝上さんや上入佐さんという個人の想いが、新たなネットワークを広げ、会社全体を巻き込んで大きな影響をもたらしたように、他者と共創することで主体者自身も変容しアップデートされ、さらに共創を促進させていきます。

共創が生まれやすい場とは?

共創を生み出していくうえで、アジェンダのない出会いや、そこから継続的に関係性を積み上げていくプロセスが機能するためには、信頼のネットワークや価値観を共有できる信頼関係がベースにあることが重要です。

「大切なことを共有する人たち」が集まる場での出会いや、そこから対話を重ねることで、新たなアクションや事業が生まれるのです。
溝上さん、上入佐さんも参加された「Beyondカンファレンス」は、「意志ある挑戦が溢れる社会を創る」をミッションに掲げ、企業や大学、NPOが業界や事業規模の違いを超えて連携・協働を推進するために提供される創発型企業
コンソーシアムによる年1回のイベントです。

第1回は鎌倉・建長寺での「越境」、第2回は京都里山での「舞台に上がって、ええじゃないか!」。
そして第3回は、日本の結節点・世界への玄関口でもある羽田イノベーションシティで「握手から、はじめよう。」をテーマに開催しました。​

第4回となる今年のテーマは「研ぎ澄ます」。淡路島全土、島をまるごと舞台にして開催します。この場に初めて足を運んだ参加者たちが、プロジェクトオーナーや淡路島の皆さんの想いに触れる中で、「本当に自分がやりたいこと、大切にしたいこと」「なぜここにいるのか」への想いを「研ぎ澄ます」。

その結果、誰かの想いへの「参画」や、この場の出会いをきっかけに新たな共創が生まれることを目指しています。
この場は、大切なことを共有する仲間探しの場でもあります。
共創のきっかけを探している方は、ぜひご参加ください。


イベントのご案内

【4月25日、26日開催】
Beyondカンファレンス2025 


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