市民との協働について考える~市民社会の担い手であるNPOや社会起業家との協働とは

(「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS」2025年7月18日号より 転載)

皆さん、こんにちは!ETIC.の大竹です。
毎日暑いが続きますが、いかがお過ごしでしょうか?

今日はETIC.が取組んでいる「つなぐ」活動のひとつについてご紹介します。

ETIC.は、「行動を起こす人に伴走し、つなぎ、ともに『新しい社会』をつくる」という理念のもと、社会の未来をつくる「起業家型リーダー」を育むことをミッションに活動しています。

より良い未来を、自らの意思で挑戦し切り開いていく、そんな人の存在が社会全体を社会をもっと良くしていくと信念のもと、社会起業家の支援だけでなく、高校生や大学生など次世代のリーダーを育てるプログラムや地域でチャレンジするローカルベンチャーの後押し等、起業家型リーダーを育むさまざまなプログラムを行っています。

先月、「市民との協働について考える~市民社会の担い手であるNPOや社会起業家との協働とは」をテーマに、今年の4月に新しく国家公務員になられた皆さんにむけた研修を実施しました。

この研修は、ETICが十数年に渡り人事院と協力しているもので、新たに国家公務員になられる方々が、社会課題の現場で取り組む市民型・事業型リーダーの活動について知る機会を提供するために行っています。

社会起業家のBeingに触れる

今回の研修には、5名の若手社会起業家が登壇しました。

それぞれの起業家からは活動の原点となっている想いや、現在の事業を通じて向き合っている課題についてプレゼン頂きました。次いで、国家公務員の皆さんには、行政と社会起業家がより良い社会のためにどのように関係を構築できるかについて、日々の事業活動で市民の声と向き合う社会起業家との対話を通じて考えて頂く時間を持ちました。

対話の時間では、構造的な問題や課題に対して、強い想いとリーダーシップをもって日々現場で人々のニーズに真摯に向き合う起業家自身のあり方やマインド、姿勢に触れる質問も投げかけられました。5人の中には大学在学中に起業した研修参加者よりも若い起業家もおり、参加者からは、同年代の社会起業家たちの挑戦と経験に刺激を受けたという声も多く聞かれました。

セクターを越えた“対話”から繋がる

社会は多様な人々・構造で構成されており、セクターを超えた協働は不可欠です。近年はセクター間連携の重要性が語られることは珍しくなくなりましたが、時としてセクターの特性による役割分担が先行すると、意図せぬ線引きや分断に繋がることもあります。

わたし自身が行政セクターからNPOセクターへ移った身ですが、先に繋がる本質的な協働のためには、少し泥臭く感じるかもしれませんが、まずお互いを知り心を通わせる「場」が重要だと感じます。今回の研修では、登壇者と研修生がフラットに心を開き、新たな学びや気づきを通じて、自然と信頼関係が築かれていくのを感じました。

研修終了後の自由交流の時間を使い、多くの研修生が積極的に起業家のもとに集まる姿を目の当たりにしました。後日、この時に連絡を取りあった起業家と研修生の交流が続いているというご連絡も頂き、あらためて、このような率直かつ対等な対話の場が重要だと感じました。

異なる立場が響き合う協働への一歩

公務員の方々も社会起業家も、同じように社会を良くしたいという強い想いを持っています。大きな志は同じはずなのに、自身の立場での経験や視点が積み重なるうちに、お互いを自分たちとは「違う人たち」と感じたり、自分の期待にそぐわない相手への不満や軋轢にエネルギーが向かうのは残念です。

それぞれの立場が担うものの違いや難しさを認め合い、信頼を重ねながら関係を育くみ、それぞれの強みや役割を最大限活かすことが、より良い未来を切り拓くことに繋がるはずです。

今回の研修は出発点のひとつです。今回芽吹いた対話の輪が、やがて社会構造に変革をもたらす大きな力となることを信じています!