社員インタビュー

「自治」と「共助」の原体験が自分を動かす。地元と全国の支援をつなぎ、挑戦と支え合いの「余白」を生み出す。ETIC.コーディネーターインタビュー──光野達也

ETIC.(エティック)のローカルイノベーション事業部で日本各地のプロジェクトに関わり、地元の愛媛県西条市ではNPO法人Eyes代表理事として地域の挑戦を応援する光野達也。

2019年に「地元で頑張っている人を応援したい」とETIC.へ入職後、実践型インターンシップや中小企業の副業人材受け入れ支援などを担当し、全国の地域とつながりを深めてきました。

2020年には、コロナ禍を機に東京から地元・愛媛県西条市(さいじょうし)に住まいを移します。ETIC.のスタッフとしてリモートワークをしながら、西条では実践型インターンシップや中小企業の副業人材の受け入れ支援、その後、高校生の挑戦・探究学習の支援に積極的に取り組んできました。「どちらにも関わり続けるからこその学びや相乗効果がある」と話す光野。さらに、隣町での地域運営組織の立ち上げ支援など、活動の幅を「自治」「共助」へと広げています。

光野にとって仕事の原点とは何か?地域に挑戦と支え合いを生み出すための「余白」のつくり方とは?同じくETIC.スタッフの木村静が話を聞きました。

こんな生き方をしたい。ETIC.と再会した一冊の本

木村:まずはこれまでの経歴や、ETIC.との出合いを教えてください。

光野:大学卒業後、2017年4月から地元愛媛の銀行で仕事をし、2年目の終わりに退職しました。

銀行を辞めた理由は、シンプルに「やりがいを見出せなかった」のと、「自分のやったことが誰の笑顔につながっているのか」がわからなくなってしまったからでした。銀行での仕事は体系化されているので成果は出るんです。けれど、「誰の役に立っているのかが見えない」ところが自分の中で引っかかっていて、モヤモヤが高まっていきました。

「じゃあ僕は誰のために何がしたいんだろう」という仕事の原点を確認しようと考えたんです。

僕は地元の西条市が好きなので、「ちょっと町を歩くか」と思って歩きながら、自分がやりたいことと、仕事探しを並行して進めていました。

たまたま部屋の本棚に『好きなまちで仕事を創る』という本があったんです。それを手にとって開いて、「こういう生き方いいな」「こういう生き方、僕もしたいな」と思って。で、この本はどこが出版しているんだろうと見たら「NPO法人ETIC.」と書いてあったんです。

「ちょっとおもしろそうだな、地域を知る活動と並行してETIC.にも話を聞いてみるか」と思って、問い合わせをしました。

木村:なぜその本が本棚にあったのですか?

光野:大学時代、ソーシャルセクターに関心があって、「社会課題解決に取り組む人たちって何を考えているんだろう」「地域課題解決に取り組む人たちって何をしているんだろう」と調べていた時期があったんです。そのときにETIC.を知って、その本を買ったんだと思います。大学2年生の頃で十数年前なので記憶はあやふやですが、実は当時ETIC.に出合っていたんですよ。

地元・西条での木工所体験と「原点」の確立

光野:問い合わせ後、ETIC.の人と話をして、元ETIC.スタッフで、3年間東京で働いて地元へUターンして起業した石山紗希さんを紹介してもらいました。石山さんは、「西条市出身なんだ。Next Commons Lab西条(2022年に活動終了)というのが最近できるらしいよ。よかったらその人たちとつなごうか」と言って紹介してくれたんです。

Next Commons Labに連絡したら、「ちょうど今、西条でコワーキングスペースの立ち上げをやっているんだよ」と話してくれて。そのときはまだ無職だったので、「手伝います」と言ったんです。

そこからNext Commons Labの活動に加わって、コワーキングスペースに置く机や椅子などの家具作りの進行役を任されました。家具の製造は、商店街にある「石の細道」という木工所でした。

その木工所は地域の人たちがよく集まる場所で、そこに出入りすることで地域の人たちの顔が見えてきました。寒い時期だったのでお餅を焼いてみんなで食べたり、話したり。僕が「抹茶をたてられます」と言ったら、誰かが茶釜を持ってきて、僕が茶をたててみんなで飲んだり、木工作業をしながらいろいろやっていました。

そこで「楽しいな」「働くならこの人たちのために働きたいな」「こういう人たちが元気になるような何かをやりたい」と思ったんです。地元で元気に頑張っている人たちを、仕事を通じて応援できるようになりたい、とここでの数カ月間の関わりを通して目標が定まりました。

同時にETIC.で働く目的もはっきりしました。ETIC.といえば実践型インターンシップや、地域での中間支援組織の立ち上げなどをやっている団体だと聞いたので、「じゃあその立ち上げのノウハウや、地域に人をつなぐノウハウを学ぼうじゃないか」と。入職が決まったのは2019年3月のことです。当時は3年間、ETIC.のある東京で修行をして西条市に帰るつもりでした。

東京修行がコロナ禍で一転、リモート勤務と地元での兼業

木村:数珠繋ぎに活動が広がって、やりたいことが決まり目標も定まったんですね。それで、石山さんのように東京での修行期間が始まったのですね。

光野:はい。ETIC.入職後は、さっそく実践型インターンシップや、中小企業での副業コーディネートを担当しました。そんな矢先に、新型コロナウイルスが流行し、リモートワークになったんです。そこで、当初の予定を2年ほど前倒しして地元に戻りました。リモートでETIC.の仕事をしながら、地元で個人事業主としても動き始めたんです。

木村:兼業で地元でも仕事を始めたんですね。

光野:コロナによって、「独立して戻る」以外の選択肢が増えたんです。リモートが可能になったことで、ETIC.で全国のプロジェクトに関わりながら、地元で頑張っている人を応援するという個人事業としての仕事もできます。それがすごく良い形だったと思うんです。

ETIC.にいると全国の事例を知れて、いろいろな地域に知り合いができます。これは人生という長いスパンで見た時にすごく貴重な財産だと思うんです。

茨城の関係人口づくりの事業(iBARAKICK イバラキック)は、西条にいながらプロジェクトマネージャーとして担当しました。当初の予定通り3年間だけETIC.で働いたあと、西条に戻って独立していたら、他県のプロジェクトに関わる機会はなかっただろうと思います。ETIC.に入社して約7年経ちますが、働き続けることで、地域を越えた関わりが広がっています。本当にありがたいですね。

木村:地元に戻ってからの活動について、教えてもらえますか。

光野:最初は個人事業主として地元企業と関係をつくり、実践型インターンシップや副業人材のマッチング・コーディネート(中小企業が期間限定で大学生や副業人材を受け入れるつなぎ役)をしていました。2024年6月からは、NPO法人Eyes(アイズ)の理事として活動し、今年から代表理事を務めています。NPO法人Eyesは、「若者が主体的に動ける人材へ成長すること」を目標に、20年ほど前に設立された県域の中間支援組織です。Eyesでは今、インターン、副業、高校の探究学習のコーディネートをしています。

なかでも力を入れているのは高校の探究学習です。西条市には大学がないので「高校」での教育がすごく大事だと思っているんです。高校で授業をして、高校生を地域とつなぎ、地域の課題解決や、地元企業がやりたいことをPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング:実践形式の授業)として取り組んでいます。生徒が課題解決方法を提案して終わるのではなく、実際に実行するところまで一緒に取り組む授業です。

木村:地元での活動では何を大事にしていますか。

光野:地域には、実践型インターンシップのおもしろさや、地域に外部から人材を受け入れていく文化を広めていきたいと思っています。とくに、西条市内で、顔の見える関係性の人たちへの働きかけをしていきたいです。挑戦したいと思った人や何かやってみたいと思った人たちが、一歩を踏み出しやすくなる街にしていくことが大事だなと思っています。

また、教育環境でいうと、愛媛県内の大学生は半数が県外出身者ですが、卒業時には7割強が県外へ就職します。四国は橋を渡るか船に乗らないと本州に行けない地理的条件もあり、一度出ると戻りにくいんです。だから、大学進学で来てくれた学生に地域の良いところを体験してもらうことや、高校生のうちに地元で「原体験」を持ってもらうことが重要だと思っています。

僕が考える原体験とは、「ちょっと苦労したかどうか」「何者かになれたか、何かを成せたかどうか」です。調べ物をして提案して終わる浅い探究ではなく、「商品の原価計算までやってパン屋さんに伝え、試作品を作ってもらって一緒に売るまでやりきる」という適度な苦労を経て、「私ここでパンを開発して月最高10万売ったんだよ」と話せる人を増やしたい。これは、学校のカリキュラムを超えて、自主事業としてでもやりたいと考えています。

人口が減り産業が縮小していくなかで、どんな地域が選ばれおもしろくなっていくかというと、「おもしろそうだね」と思うものをおもしろがってチャレンジしていける地域だと思うんです。自分のやりたいことに正直にフットワーク軽く動ける人がたくさんいる町を目指したい。そのために大学生や高校生、副業人材をつないだり、地域内の多様なリソースをつないで手広く応援していきたいです。

「自治」と「防災」がつながった瞬間

木村:地域運営組織(RMO:Region Management Organization 地域の暮らしを守るために地域住民が自治会やNPOなど多様な主体と連携して形成する組織。一定の要件により総務省の特別交付税措置がある)の立ち上げ支援もしているんですよね。どういう経緯で始まったんですか?

光野:西条市の隣の新居浜市(にいはまし)でのRMOを立ち上げるということで、目標設定や住民がやりたいことの言語化など、ファシリテーターに近い役割で3〜4カ月ご一緒しています。

以前、西条市内の住民自治が盛んな地域で、空き家活用ワークショップを手伝ったのがきっかけです。関係者の方に「こういう住民自治の取り組みってすごく大事ですよね」と話していたら、「光野は自治に関心があるんだ」と思ってもらえたのか、お仕事をいただくようになりました。

確かに、今ETIC.でやっている防災の取り組みとのつながりで考えてみると、僕は自治に関心があったんですよ。災害時は、行政・社会福祉協議会・災害支援といった公的なシステムがある一方で、公的な動きではカバーできない民間の被災者支援の動きって、ほぼ「自治」なんですよね。公助によって支えられる復旧・復興ではなく、企業や住民が連携し合いながら自治的に地域を守り復旧・復興していく動きなんです。

防災も自治ももともとはあまり接点のない仕事だったのですが、ETIC.の2023年度の休眠預金活用事業(地域の共助力・起動力を高める地域中間支援組織による防災・災害支援事業)で地域の自治による災害対応力やレジリエンスの向上に関わるようになり、「自治っておもしろいし大事だな」とすごく楽しく取り組めるようになりました。

木村:防災と自治がつながったんですね。

光野:はい。最近気づいたんです。防災に取り組む団体の方々は、防災を「防災」と思ってやっていないんです。平時から地域課題解決や住民・民間同士の支え合いに取り組んでいて、「助け合えるつながりを作っておけば有事にも活きる」という考え方なので、主軸は自治なんです。

木村:西条での木工所の原体験と、今やっている自治や防災の取り組みが全部つながっていますね。

光野:そうなんですよ。紐解くと、商店街の木工所でいろんな人が集まってできていた支え合える関係性は、自分たちで自立して動く「自治」そのものだったんですよね。その頃から僕は自治に関心があったんだなと気づきました。支え合い、つながり合うというキーワードで全部つながっているんですよね。

木村:ETIC.での仕事と地元での活動が相互に影響し合っている実感はありますか?

光野:ありますね。地元で試したことや得た気づきがETIC.の仕事で活きることもあれば、自治のおもしろさに気づいて地域でそういう仕事が舞い込むようになることもある。どっちもやっているからこその学びや相乗効果はあると感じています。

「共助・自治」の探究と温かいコミュニティのある世界

木村:今後の展望は?

光野:ETIC.では、民間の共助によって支えられる防災や災害支援の取り組みを探究し続けたいです。民間のプレイヤーが、公的な支援が届かない隙間を埋める自治のあり方を模索したいです。

先日行った福岡県久留米市では「ちいさな拠点」という木工所のような集まり場が市内に70数カ所もあり、今回の令和8年熊本地震ではそのコミュニティで「洗濯機出せるよ」「冷蔵車出せるよ」とすぐに助け合いが動いていました。

全国の地域でそうした助け合いができるようになれば、人々の暮らしが温かくなりますし、公助の予算を適正化して投資に回せる財政的な良さもあると思います。東京に住み始めた頃、アパートの隣近所の部屋に入居のあいさつに行ったら誰も出てくれなくて、ドアノブに洗剤を下げて帰ったのですが、そんなドライな世界ではなく、温かいつながりやコミュニティのある世界を広げていきたいですね。

木村:そうした自治や共助が育まれる地域には、どういった要素が必要だと思いますか?

光野:1つは、「人情や人付き合いを大切にする個性豊かな個人事業主がちゃんといること」。町の規模に関係なく、そうした顔の見える個人事業主の存在が大事な要素だと思います。もう1つは、「何か挑戦しやすい余白があること」です。

秋田県五城目町(ごじょうめまち)の「ごじょうめ朝市plus+」では、町内住民なら110円(町外でも210円)という破格の出店費用で露店を出せます。そこでは高校生が高齢者向けに「スマホの使い方講座」を出店していたりするんです。1日1万円の出店料だと元が取れませんが、200円なら1人教えればペイできますよね。

そういう誰でもライトに何かをやりやすい地域や、「こんなことやりたい」と言いやすい環境、時間・金銭・場所的な「余白」があり制限で締め付けすぎないことが、自分たちのことを自分たちでやる「自治」の土壌を育むのだと思っています。

木村:確かにそうですね。今日はありがとうございました。

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