ナレッジ・ノウハウ
「選考は“アトラクト”の場」──候補者の志望意欲を高める選考設計
先週、ソーシャルセクターの採用担当者向け勉強会を久しぶりに対面で実施しました。テーマは「採用要件」だったのですが、他団体の悩みを聞くことで、自団体の課題の解像度が上がり、具体的なアドバイスを得られたという声のほか、悩みを聞いてもらえて励まされたというご感想もいただき、改めて対話の重要性を感じました。
今回の勉強会でも盛り上がったことの一つに「
特に、創業期やビジネスモデルを模索していた時期に、たまたま優秀で、ビジョンコミットも高い人が参画してくれた。その人と比べてしまい新しい方をなかなか採用できないという話はよく耳にします。どうすればその過去の成功体験の呪縛(!)
過去の成功体験から解き放たれるためには、その「過去の成功体験」を感情的な「理想の個人像」として捉えるのではなく、「どのような要件・行動が当時の事業成長に貢献したのか」という『再現性のある成功要因』として客観的に分解・言語化することから始めます。そして、現在の事業フェーズと、未来の成長に必要な人材要件をゼロベースで再定義することが不可欠です。
…ま、そうですよね。当然のことを言われている気がします。しかし、理由と背景まで読みすすめると、ハッとすることが書かれていました。
【理由と背景】この問題は、ソーシャルセクターに限らず多くの成長企業で共通して発生する、非常に重要な課題です。特に創業期やビジネスモデル模索期に採用された人材は、以下のような特性を持つことが多く、後続の採用において「特別な存在」として扱われがちです。
◉高いビジョンコミットメント: 創業期の不確実な状況で参画する人は、金銭的報酬以上に事業への強い共感や使命感を持ち、自律的に動ける傾向があります。
◉多才なジェネラリスト: 人員が少ない中で、複数の役割をこなし、未経験の業務にも果敢に挑戦する「何でも屋」的な側面を持つことが多いです。
◉困難を乗り越える強い精神力: 事業の不安定さや失敗を恐れず、粘り強く課題解決に取り組む姿勢が求められます。
◉偶然の巡り合わせ: 良い人材との出会いは、時に募集をかけた結果というより、人脈やタイミングといった「偶然」の要素が大きく影響することもあります。
これらの特性を持つ「たまたま優秀な人」が事業の土台を築いた成功体験は、経営者や採用担当者にとって非常に強い原体験となり、心理的なバイアスを生み出します。

◉心理的バイアス: 「あの人がいたから成功した」「あの人と同じような人を見つけたい」という感情が先行し、論理的な採用基準ではなく、過去の特定の人材像に囚われてしまう。
◉要件の肥大化: 過去のメンバーが持っていた様々な能力・経験(創業期ゆえの多才さ)を、新規採用者にも全て求めてしまい、結果的に市場に存在しないような「超人」を求める状態に陥る。
◉現状認識の欠如: 事業フェーズが変わり、組織規模も拡大しているにも関わらず、必要な人材像をアップデートできない。過去の「何でも屋」が必要だったフェーズから、専門性やマネジメント力が求められるフェーズへと移行していることに気づかない、あるいは認められない。
◉機会損失: 結果として、現在の事業にとって本当に必要な能力やポテンシャルを持つ人材を見過ごし、採用プロセスが長期化・停滞し、事業成長の機会を逃してしまいます。
この「過去の成功体験の呪縛」から解き放たれるためには、組織全体の意識改革と、採用プロセスの見直しが不可欠です。
創業者からすると不確実性の高い中で参画してくれて、なおかつ、結果論だとしても「何でも屋」を担ってくれた人に対して「特別な存在(=優秀な人材)」とみてしまうのは致し方ない気がします。困難な状況を一緒に乗り越えてきた、修羅場を共にした仲間という感覚もあるでしょう。
もちろんそういうメンバーに感謝はあってしかるべきだと思いますが、今の組織フェーズにおいて本当に必要な人材はどういう人なのかを感情ではなく論理的に。イメージではなく具体で考え、要件を見直すことはやはり必要そうです。改めて結論に戻り、具体的にできそうなことを整理してみました。
組織は常に変化しています。創業期と成長期、インパクト拡大期では、必要な役割やスキルセットが全く異なります。「過去の成功体験」を基準にするのではなく、組織の「未来の成功」を軸に。「今、何ができていないのか」「これから何を達成したいのか」を明確にし、そこに貢献できる人材像を考える。
特定の個人の成功は再現が難しいですが、「どのような状況で、どのようなスキルやマインドセットを持っていた人が、どんな行動をして、結果的にどんな成果を出したか」という要素に分解できれば、それは再現性のある成功要因となり得ます。
「あの人のように優秀な人」という漠然とした基準ではなく、「あの人のように『◯◯という状況で、△△というスキルを活かして、××という課題を解決できる人』」という具体的な基準を探してみる。
いかがでしょうか。この2つの論点について社内で対話しておけると、候補者に求めるスキルやスタンス、行動指針が自然と言語化するので、採用基準が整理され、選考の際にもブレが起きにくくなると思います。今後も勉強会は企画していくので、取り上げてほしいテーマがあればぜひ送ってください。
※本記事は2026年2月4日配信の『人材獲得 / 組織づくりメルマガ』の内容を転記したものです。メルマガの登録はこちらからお願いいたします。
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